2011年春のお江戸ツアー

3月25日(金)------------------------------------------------------

上京。なにが起るか分からんので、今回はケチケチ貧乏行はやめて新幹線を使う。それでも金券ショップで少しでも安い切符を買う。そして昼前、広島を出発。

逃げ帰って来てゐる人が結構ゐるくらいだから、こらぁ東行きの新幹線なぞガラガラか、と思ってゐたがさにあらず。最終的には結構満員の列車となって、東京駅へ。隣のおっさん(多分税理士)がづーっとパソコンをいぢってゐやがった。パタパタとキィがうるさいのだ。

さて東京は、噂に聞いてゐた通り、確かに電気が半分くらいしか灯いてない。コンビニやキヲスクが看板の電気を消してゐて、みんな閉店してゐるかのやうだ。だが、人は相変わらず多い。いつもと比ぶれば少ないやうな気もするが、普段住んでる訳でもないので、よぅ分からんな。人々に元気がない、と云ふが、元気がない、って云ふよりはジェントルなかんぢがして、全然悪くないんだが・・・。まぁそれこそ日頃住んでる訳でもないので、分からんが・・・。

調べた住所を頼りに三軒茶屋を歩き、けふの会場「ふろむ・あーすcafe Ohana」に到着。けふのホストである、じぶこんのお二人に迎えられ、やぁやぁお久しぶりです、と挨拶。交友関係と旅仲間が重なったたいそう不思議な御縁で、けふご一緒させて頂く事になったのだ。ソロもだが、お二人のアンサンブルにベースを加える、といふ事も演る。事前に送ってもらった音源をしっかりチェックしておったので、予習はバッチリ。そこにワシならではの電化を加えるアイディアも好評。リハの時点だけでかなり良い気分。

本番のソロは、初日と云ふ事もあって、ややカタかったな。もう少し伸び伸び出来るはずなのだが、まぁ仕方ない。こんな事もある。

その後のじぶこんとのセッションは、こはもう素晴らしい。長年一緒にやって来たアンサンブルのやうに演れた。ツアーやレコーディングにも参加してほしい、と云ふ話も出て、そらもぅ呼んで頂けりゃ何処へでも参りまっせ!、である。いや〜初日、良いライヴでした。じぶこんの辻くん、裕子さん、ありがとう。

賄い飯が出たので、宿に帰ってからはつまみ程度のものを。宿はお馴染み久保田涼子邸。本人は広島に帰っており不在。部屋の掃除を条件に、自由に使わせてもらふ。


けふの演目:月の路/カプチーノ/Dance/振り向いたらトゥアタラ/夜明けの海ごっこ/ようそろ/らのえてぃあ/ツアー(アンコール)以上ソロ。
ぐっと太陽が昇る時/星といるか/細胞の記憶/宇宙の木/お空の下で/音の惑星/森羅(以上じぶこんと共に)

26日(土)---------------------------------------------------------------

けふはワシの所謂東京コネクション・・・パーカスくどうげんた、セロの星衛、ピアノの佐藤真也、との即席ユニット「星源真修」。ホンマはここに篠笛のことチャンがゐて、星源真琴+シュウとなるはずだったが、何故かことチャンが居らず、自然ワシをフロントマンに立てた唄ものユニットとなった。

ので、いちをうリハす。けふの会場、千歳烏山はTUBOに程近いスタヂヲを借り、3時間ほどリハ。けふの本番はノーマイクで唄わねばならず、長時間リハの後の喉がどうか、といふ懸念も少しあったが、なに、1年前には44曲4時間40分を独りで歌い上げた喉だ。大丈夫だらう。

リハを終え、みんなでぞろぞろ歩いてTUBOへ。PAシステムを取っぱらった広い空間に自由に座し、自由に音を出し、声を出す。ベースだけは小さい充電式アンプで出力し、ピアノ、パーカス、セロ、唄は生で演る。これがなかなか良い。節電を考慮しての構成だったが、出音のバランスも素晴らしかったやうで、怪我の功名と云ふか、良かったんではないかな?。

リハをしたばかりなので、内容的にもバッチリ。唄も思った通り全然大丈夫。てゆーか3時間のヲームアップで、すっかり喉がほぐれてゐて、まぁ出るでる、声が。壱時間ちょっとのコンパクトなステージだったが、内容的には素晴らしい出来栄えだった。この編成でレギュラー化したいほどだ。

嬉しかったのは、お客さんの中に鈴木亜紀さんが来てくれてゐたこと。このツアー終了後に広島に来てもらってライヴをコーディネートするのだが、長らく一方的なファンであった人に、ライヴに来てもらへ、しかも「素晴らしいので私の曲でも弾いて下さい」などと云はれるともう、ね。

終演後、亜紀さんセロの星さんとウダウダ喋る。

亜紀さんにデレるあまり、ライヴ後、個人的に南相馬市に救援物資を届けに出たゲンタさんを見送りもせず。

けふの演目:エトゥ・オロ・プ/美唄/流れよ我が涙、と警官は云った/星の真源に琴響かず/2or3 things now I know/丘にのぼる時/ムーンボゥ(アンコール)。

27日(日)-----------------------------------------------------------------------

オフ日。

自炊のためにSEIYUに買い物行く。品薄な商品が極端に偏ってゐて、オモロい。例えば缶詰。コンビーフなどは沢山残ってゐるのに、シーチキンはない、みたいな。緊急時にはコンビーフの方が栄養価高いんだぞぅ。水はどこにも売ってない。パンは棚に並ぶ先から売れてゐる。へ〜〜。だがまぁ、困るほどの不足、ってんでもない気もす。要は工夫ぢゃないのかね?

適当に買って帰り、適当なパスタ作って喰ふ。

夜は西荻窪まで亜紀さんのライヴを見に行く。同じくピアノ弾き語りの柴草令さんとの双頭イベント。会場のサンジャックは満員。立ち見するつもりでゐたが、マスターが補助椅子を出してくれて、近い所で見る事が出来た。普段から別嬪っちゃ別嬪なのだが、唄う時の亜紀さんは、ホンマに美しい。また惚れ直す。柴草さんはコミカルで無気味、といふ唄の世界で、これまたオモロい。良いライヴでした。

終演後、少しだけ一緒に呑んでから、電車で帰る。東京の住人のやうだ。

28日(月)----------------------------------------------------------------------

けふからしーなとシュウの梶山シュウになる。ゆんベ遅くにしーなさんから「東京に着いた」とメールがあった。会場の下北沢はブルームーンで落ち合う事にす。

このブルームーン。我らが兄弟分バンドBARAKAのドラマーであり、友人でもある平石正樹アニキと、その女房であり、東京でのワシとの共演経験が最も多い唄うたいである所の角辻順子ちゃんが、昨年末に始めたばかりのお店。正樹さんは『ライヴの出来る店をやろう、と思った時、最初に頭に浮かんだのはシュウが唄ってる姿だった』と云ってくれる。このやうな光栄が他にあらうか?、いや、ない。その店に、現在のワシの最も重要な広島コネクションでもある、しーなとシュウで出演出来る、と云ふのも嬉しい。

対バンは順子ちゃんが、鍵盤の滝千奈美さんとのデュオで演ってくれた。

目の前1mもない正面にお客さんが居る、といふ状況はなかなかテレるが、けふのしーシュ良いかんぢで演奏できた。ブルームーン、での初ライヴ、てことで、壱曲目は是非これで行きたかった「月の路しーなヴァージョン」。以降は割と「勝負パタン」の曲で攻めていったかんぢ。初日なので冒険は避け、堅実な選曲。まぁまぁの出来だった。「歳をとった鰐」の妙ちきりんな変拍子部分に、ちなみチャンが裏拍で手拍子を入れてくれてたのが印象的。さういやラテン系が好きだ、と云ってたな。

在京の新旧の友人知人沢山駆け付けてくれ、暖かく親密な良いライヴだった。

終演後は、正樹さんの賄いメニューでワインをカパカパ呑む。上京すると、大抵壱度は正樹さんと腰を据えて呑む事が多いのだが、「店主」となった今はさうもいかず、正樹さんにとってはジレンマの様子(笑)。

けふの演目:月の路(しーなヴァージョン)/梅雨の仙人掌/Dance/紫の狐/夜の駱駝/ひつぢは意外と気が荒い/歳をとった鰐/よぅそろ/おかえり(アンコール)/Time after time(アンコールwith順子)

29日(火)----------------------------------------------------------------

けふは御大石間秀機師匠に招待頂いて、のしーシュ。なんとロックの聖地原宿はクロコダイルである。石間秀機&成沢ヒデトモ景音楽+しーなとシュウ、の弐枚看板!。

その晴れがましい日に、しかしアクシデントは来た。朝、パスタを拵えんとしてゐた処、くしゃみの衝動が来て、深い考えもナシに横を向いて「ヘクション!」とやった。と、その瞬間、腰が「ぐ」と云って鈍い痛みが走った。あ、と思ったが動けぬ程ではないので、そのまま摺り足でパスタを作り上げた。が、喰ってる間から何やら痛みが尋常でなくなり、これはイカンと横になった途端、その姿勢から動けなくなってしまった。

これは所謂「ギックリ腰」といふやつか。

焦る頭で色々考える。医者に行かうにも動けぬし、例え行けたにせよ『安静に』と云はれ湿布を貼られるのが関の山は明白。御大に招待頂いたライヴを辞するは切腹ものの失態。医者を脅して神経ブロック注射なども可能か?、救急車で担ぎ込まれ事情を説明せばそは可能なりや?など・・・。

とりあへずしーなさんに吉祥寺まで来てもらひ、様子を見る。まづは多量の鎮痛剤を服む。で、手を貸してもらってゆっくり起き上がる。ここで、やや前屈みになった姿勢で座ると楽である事が判明。よし、これで会場に行きさえすればライヴは出来る。問題は移動だ。そろーそろーと立ち上がり摺り足で動いてみると、動ける。よし、行くぞ。

老人よりもゆっくりな歩みで、そろーそろーと吉祥寺駅まで歩き、新宿まで行き、そろーそろーと山手線に乗り換え、原宿へ。ナウいヤングに溢れる街を歌舞伎役者のやうにそろーそろーと歩み、会場のクロコダイルへ。よし、取り合へず会場には着いた。

聞けば石間さんもVJの成沢さんも、しーなさんもギックリ腰の経験者。辛いよねぇ、などと云ひつつサウンドチェック&リハ。演奏には全く支障なし。気を付けて動けば大丈夫だ。

さうなってみるとあとは師匠の恩恵に預かるVIP待遇で、素晴らしく美味な賄い飯に、楽屋にはビールの山。40年続く老舗を、設立当時から飾って来た大御所の存在感を知らしめる。我々はすごい人と一緒にステージに立とうとしてゐるのだ。

で、本番。石間さんがカッコよく紹介してくれる。『広島から友人がやって来てくれました。紹介します。しーなとシュウ!』。拍手に迎えられながら、そろーそろーとまさに歌舞伎役者のやうに登場。かっこわるいがまぁ仕方ない。演奏の出来は完璧。声も良く出るし、ベースも絶好調。力むと危ないので力を抜いて演ったのも効を奏し、割とベストなしーシュ。40分一気に演って、どーもありがとう!と云って、そろーそろー、と引き上げる。

後続の景音楽を楽屋で聴き、ラストは石間さんとのセッション。またそろーそろーと登場し、楽しく演奏。そろーそろーと退場してゐる最中にアンコールがかかり、そろーそろーと引き返す、といふ、その間抜けぶりが結構ウケてゐたやうで、それなら良かった。本当に素晴らしいライヴだった。腰の痛みさえなければ至福の夜であった。

会場にはしーなさんの同級生(!)が来てゐて、質問攻めに遭う。みんなひとかどの「成功者」のやうだ。かういふの見ると、若き日のこの人が如何にエリートだったか、を思ひ知らされる。それが今やえせニックなハゲの相棒とは!。逆もしかり。ギターを弾く事以外なんの取り柄もなかった田舎の中学生が、今や元エリートの美貌のアーティストの参謀!。その二人が、日本のロックの黎明を支えた巨匠と同じステージに立ち、笑いながら音を交わしてゐる。

人生は分からんものである。分からんからオモロいのだ。

石間さん、ありがとうございました。

けふの演目:月の路(しーなヴァージョン)/梅雨の仙人掌/Dance/夜の駱駝/よぅそろ/ひつぢは意外と気が荒い/らくだ(以上しーシュ)。
月のチャクラ/丘にのぼる時(しーなヴァージョン)/即興曲(以上石間、しーな、シュウ)。

30日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

オフ日。

けふはガタム奏者の久野まっは隆昭のお宅にお呼ばれしてゐる。腰の様子によっては辞退すべきか、とも考えたが、昨日無理にでも歩いたのが良かったのか、けふはだいぶマシである。ので、気を付けながら伺う事にした。

しーなさんと合流して国立へ。教えてもらった道筋と地図を頼りに、無事まっは君宅に到着。ワシらが来る事を聞いて、シューちゃんこと倍音クレージー岡山守治も来てくれた。オー東京で、しーシュとシューマッハの邂逅だ。それぞれが持ち寄った酒を呑みながら、まっは君の心づくしの手料理を頂く。キチンに立ち、右へ左へ鮮やかなフットワークで動きながら料理するまっは君の姿は、パーカッショニストそのものの姿だった。

音楽、生活、政治、嗜好、趣味、の話など、この面子でここでかうして寛いでゐる、といふのがとても不思議な壱夜であった。

まっは君に感謝。

31日(木)-----------------------------------------------------------------------------

まっは君とこで朝飯兼昼飯も御馳走になり、昼過ぎに新横浜へ出発。国立から電車を乗り継いで、約2時間の旅。

新横浜Bell'sは初めてのハコ。朋友三輪雅也が定期的に出演してゐる処で、前々から出てみたかった会場だ。けふはアクースティックナイト、といふ事でそれ系の人達が4組。ジョンファ、といふ鍵盤弾き語りの女性の唄が素晴らしい。三輪くんの音楽も見るたびに進化してゐて、良いかんぢに熟成されつつある様子。

けふのワシらは、新曲「苔の記憶」を披露。音の良さも相まって素晴らしい演奏が出来た。スタッフの対応も良く、素晴らしいハコだ。気に入ったなぁ。

ワシらのリハを見た三輪くんからのリクエストで、トリの三輪くんの曲にしーシュで参加。3人で名曲「海へ行こう」を演奏。3声のハーモニィまでキメる、といふ初めてとは思へぬ見事なセッションを成し遂げた。

つくづく思ふのだが、こないだのじぶこんとのセッションもさうだったやうに、ワシらのやうなミュージシャンは、てめぇのソロにも力を入れるが、人様のバックに廻ってセンス良く主役を立てる演奏もぢつはたいへん好きで、その両立が壱度のライヴで出来るのは、もう最高!の気分なのである。また、さういふ事の出来る音楽家である事に、誇りも持ってゐる。

が、残念ながらけふの集客率は、かなり寂しいものだった。何より弐番手の出演者が終わった後、そこそこゐたお客さんの大半が帰ってしまったのには驚いた。それに壱番手の若い男の子のトリオなど、他の出演者を見る気もないやうで、出番以外は会場にすら居ないやうだった。まぁ人の勝手だけどね・・・・。

けふは「超裏技」を使ってホテルに格安で泊った。高層階から見る新横浜の街は暗く沈んでゐて、しかしこの灯りで充分だな、と思はしむる美しさ。今までの日本の都会は明る過ぎたのだ。インドも、中国も、メキシコも夜は暗かった。あれで良いのだらう。日本もさうなれば良いのだ。

部屋呑みしてゐるうちに撃沈。

けふの演目:毬藻ありマス/梅雨の仙人掌/苔の記憶/水母の夢/紫の狐/歳をとった鰐。

1日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

オフ日。てゆーかしーなさんはけふで帰還。その前にワシのお気に入り、新横浜ラーメン博物館に連れて行く。ワシが此所を好きな事を不思議がる人も多いが、うーん、なんでだろ?好きなんよねぇ。

昭和33年の日本、をイメェヂしたテーマパークに、しーなさん興味津々。ラーメンはまぁさておき、二人して昼間ッからホッピー呑んでごきげん。ダメ中年デュオである。

さて2時ぐらいの新幹線で旅立つしーなさんを見送り、ワシは東横線で再び東京へ。けふは杉並に住む友人フリーライター小野寺隆之の処に世話になる。上石神井の沖縄料理店で呑み、さらにウチに帰って呑む。看護士をやってる奥さんも帰って来て、3人でさらに呑む。こんな混乱した時期に訪ねて来る友人を、もてなしてくれて感謝。

2日(土)-----------------------------------------------------------------------------------

昼まで小野寺んところでのんびりし、歩いて吉祥寺へ行く。天気が良いので、思いきって着てる服全部を洗濯機に放り込んだ。したら何故か途中から止まってゐて、それにしばらく気付かなんだので、夕方近くになった時点で服が乾いてない!てな事態に!。ありゃりゃ今夜はライヴなのに、どーすっべ?。

どーしやうか迷ったのだが、結局寝巻き変わりに使ってゐるもんぺを履いて行く事にす。東京は変わったカッコした人がいっぱいゐるから、もんぺぐらい何でもない。事実、なんでもなかった。

けふはBARAKAのギタリスト高見一生さんが演ってる別ユニット、Kiyomi&Isseyのライヴの前座を勤める。会場は今回弐度目の下北沢Blue moon。開演時間にはもう満杯のお客さん。凄い集客力だ。あ”〜・・・こないだの西荻での亜紀さんのライヴもいっぱいだったし・・・、こらぁ地震や自粛の影響で客が少ない、てのは言い訳にならんね。ん”〜深く考える。

さて、そのアウェー感満載の中で4曲ほど披露。流石ツアーもこの辺に来ると、指も喉も完全に「開かれ」てゐて、思ふままに操れるかんぢ。気分良く唄ひ、思ひの他ウケて喝采を頂き安堵。CDも良く売れた。何人もの方に「素晴らしかった」と話しかけてもらへ、嬉しい。その後、本割のKiymi&Isseyのノリノリ音楽(歌謡曲+アフリカン×ソウルミュージック、てかんぢ)で、会場も大いに盛り上がり、たいへん素晴らしいライヴだった。良い気分でワインを飲み過ぎて・・・・。

この日賄いに頂いた順子ちゃん製の「ゆずこせうパスタ」が絶品だった。いちをうレシピは聞いたが、果たしてワシに作れるのかっ?。

けふの演目:月の路/振り向いたらトゥアタラ/夜明けの海ごっこ/らのえてぃあ

3日(日)-----------------------------------------------------------------------------------

お江戸での最終日。素晴らしいシンガー松村志野ちゃんとそのダンナでギターの斎藤邦彦の「しのくに」プレゼンツ・イベント「余白まつり」だ。

初台、といふ場所に初めて行ったが、新宿まで歩いて行けるとこらしひ。しのチャンはそんな辺りで育ったのださう。こんな都心部に近い処でも、ちょいと入れば良いかんぢの商店街がまだ現役で息づいてゐる、てのは東京の良い所だな。

さてイベントは、しのチャンの御父上(俳優)所有自宅アトリエを使っての、完全予約制ライヴ。ワシとしのくに、の他にあのヤマザキヤマトくんも出演。しのチャンが個人的に敬愛する音楽家を集めたイベントにしたかった、といふ。嬉しいですね。心してかかりませう。初対面の人も多かったスタッフもみんな素敵な人達で、しのチャンの人柄の為せる業だらうな。すぐ打ち解け話などできる。

本番は、昨日にもまして「完全なアウェー」で、60人以上集まったお客さんの中に、ワシを知ってる人は皆無!。真価が問われます。ヤマトくんの素晴らしくプリミティブでスピリチュアルなステージ(Hung drum3ツの同時演奏が凄かった)に続き、ワシ。特に策もなくいつも通りに演る。昨日以上にベースもだが、喉が絶好調。声がのびるのびる。ほぼ生声に近いかんぢで演ったが、それも良かった。お江戸最終日、良いライヴが出来て満足。

トリのしのくに。一見(一聴)すると普通の優しい音楽だが、どこかに醒めた力強さがあり、それがしのチャンの伸びやかな唄声にマッチして、独特の雰囲気を造り出してゐる。しのチャンの唄はやはり良いなぁ。最後は出演者全員でアンビエントなセッション。これもたいへん素晴らしかった。良いイベントだった。

ここで、持って来たCDが全部売れた。近年珍しい売れ行きで、それはたいへん嬉しいのだが、明日の京都で売るものがない、といふ事態が発生。どーしやうか。

打ち上げは初台駅前の居酒屋で。お江戸最後の夜を楽しむ。邦彦クンがやたらワシのルーツを知りたがるのがおかしかった。さういやこないだの原宿でも、しーなさんの同級生の方々に『なにをすればあなたのやうなモノが出来上がるのか?』と訊かれて笑ったのだった。なんででせうね?。

けふの演目:ストロマトライト/丘にのぼる時/Dance/振り向いたらトゥアタラ/夜の駱駝/よぅそろ/らのえてぃあ

4日(月)----------------------------------------------------------------------------------

けふは京都へ!。

間借人としての責務を果たし、完璧に部屋の掃除を仕上げてから鍵を閉め、お江戸を後にす。昼前発の新幹線で京都へ向かふ。東京駅のキヲスクで買った「猫鳴り」といふ小説がとても面白くて、夢中になって読んでるうちに京都へ着。京都の定宿ホワイトホテルにチェックインしてから、会場のAfter beatを目指す。

けふは「低音上手」といふAfter beat主催のイベントださうで、出演者全員がソロ・ベースといふ(笑)。それぞれ日頃はバンドのベーシストとして活動してゐるおもに若いコらに、新しい演り方を喚起する、といふ意味ではたいへん有意義で意味深いイベント。かういふ事をお店側が主催してくれてゐる、と云ふのも凄いと思ふ。良いイベントに呼んで頂けたもんだ。

大阪の朋友泉尚也さんと再会。古い友人に会ったかのやうにホッとす。対バンにソロベース専門の服部龍生さんもゐて、ワシは一方的に知ってゐたが、龍生さんもワシの噂を色々聞いてゐた様子。初対面でやぁやぁ、とか話す。他も志の高い若いベーシストばかりで、これはソロに特化したモノとしては、「落とせない」場である。キアイ入る。

が、楽屋やオフステージでは、出演者全員が異常なほど友好的に開放的で、みんなで一緒にコンビニに食料調達に行ったりとか、オモロい。かういふ処が如何様にでも「ベーシスト」なのだな、と思ふ。

定刻にライヴスタート。壱番手楽団ひとり。コミカルなネタを随所にちりばめた軽妙なパフォーマンスタイプ。まだまだ荒削りなれど、これを磨いて行けばなかなか他では見れぬものに成ると思ふ。弐番手是永大介。えへくたを多用したプログレッシヴなソロ。随所に王道プログレフレーズが出て来て、楽しい。参番手に龍生さん。これはもう完成された独自ソロベースの世界観。システマティックなえへくたを見事に使いこなし、凄い音圧。圧巻のパフォーマンスだった。

肆番手がワシ。けふで唯一唄もののエントリィ。ある意味けふはワシが一番「ベーシストっぽかった」のではないか?と。トリは泉さん。最近力を入れてゐると云ふ空間系のソロパフォーマンス。相変わらず安定した技術と美しい音色。お得意の「無伴奏セロ組曲」も披露。

けふのライヴはU-streamとかいふモノで生中継されてゐたらしくて、そのツイデ、といふか、出演者全員でトークショウなどやらんか、と云ふ事で、終演後のステージにセットが組まれ、泉さんを司会に座談会。お客さんからの質問コーナーや出演者同士の疑問など、なかなか楽しくて有意義なトークショウが出来たやうだ。

こちらからアーカイブスで見れるはずです(1時間30分あたりからワシが出ますよ)

終演後もベーシスト同士の話は終わらず、づっと喋ってゐる。さうするとなにやら気分が悪くなって来た。酒呑んだ訳でもないのに吐き気がして、身体がどんどん冷える。どうやら空腹が過ぎて低血糖のやうな状態になってしまったらしひ。朝飯を喰わない日にタマに起る現象だ。ワシはホンマになんか喰ってないと駄目なニンゲンなのである。やれやれ。

それでも、泉さんや若いベーシスト達との(その後の)座談会は、とても楽しく、眠気がピークに達するまでづっと喋りあってゐた。ナイスなツアー最終日である。

けふの演目:ストロマトライト/丘にのぼる時/振り向いたらトゥアタラ/夜明けの海ごっこ/らのえてぃあ

5日(火)----------------------------------------------------------------------------------

急いで帰る用事もないので、ゆっくり京都を過ごす。ホテルをチェックアウトしたら、駅のロッカーシステムに荷物を預け、ガイドブックもなく、京都の街をさまよふ。

角に当たるたびに右へ曲がる、といふルールを決め、人んチの庭?といふやうな処まで入り込んだ。共同玄関のアパートなんぞあって、しかもまだ現役。色んな人が古い町家を活用してゐる。しかし、古い建物っつっても、窓々にはちゃんとエアコンの室外機も付いてゐて、まぁそこはソレ。

さうかうしてゐるうちに鴨川に出た。腹も減ったし喉も乾いたので、コンビニで軽いパンと水を買い、河原の芝生で休憩。行き交う鴨や鳶なんぞを見てゐると、白い柴犬を連れたTシャーツ&Gパンのおねぃさんが現れ、ワシの目の前でストレッチをはじめた。しかも、かなり念入りに。相当に悩ましい光景。見られて嫌ならこんなトコでやらんだらうし、と云ふ事で、ぢっくりその艶かしいストレッチを堪能させて頂きました。

にしんそばを喰ひ、昼過ぎの新幹線にテキトーに乗る。車内はガラガラ。ハイボールを買ってゐたがすぐカラになったので、ビールを追加。そのうち眠りこけてしまったらしく、気が付いたらあと10分で広島、て処だった。久しぶりに帰った広島はとても暖かく晴れてゐる。

うん。

良い旅だったな。

『こんな東京によく来てくれたね』と云はれた。ワシからすれば、「よく迎えてくれた」と思ふ。色んな事が混乱して、とても客人に構ってゐられるやうな状況ではなかったのではないか、と。迎えてくれた友人達には心から感謝。本当にありがとう。

行く先々に、こんな素晴らしい友がゐてくれる、といふ事が嬉しい。

この線がどこまでも繋がって行く事を祈ろう。

そして、帰りを待つ人もゐる、といふ喜び。

行ける所まで行かう

友よ。

写真はこれに