3月


1週目

1日(火)----------------------------------------------------------------------------------

3月になったなぁ。単純に二日少ないだけでもやっぱり2月はえらく短い気がす。まぁ、とにかく3月、だ。

しーシュのリハ。リハの前に東京でのセッション用に書いた曲を、しーなさんに手弾きでMTRにピっと入れてもらふ。初見も楽々。流石である。こないだのリハから、色々と試行錯誤をしてくれたやうで、ボツの可能性があった曲が、なんとか持ち直した。出来が悪ければボツになる事は全く厭わぬが、やはり苦心して作った曲は「上手く上がった」ほうが嬉しい。けふは割と調子の良いリハ。

左手小指の腫れが慢性化しつつあるやうだ。湿布も効果ないので温熱治療に切り替えてみる。今の処まだ「演奏に支障がある」までには至ってないのだが、やはりちょいと速いフレィズを弾くと微妙に痛みがあるのが・・・。弾かずに居れば治る問題、なのかな?これ。

2日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

箏のトモちゃんとリハ。相変わらず会うなりズッコケをかましてくれよるが、此所には書きません(笑)。

CD「ゆほびか」における「十六夜」での彼女のプレイは、各方面から絶賛で『あの箏を弾いてるのは誰?』といふ声が多かった。ライヴにてちゃんとした共演をしたのは、その後弐回だけ。箏、といふ楽器の特性上、どんな楽曲にも臨機応変に対応、って訳にはいかぬ(『十六夜』はまさにその典型で、曲中にチューニングを変えねばならぬ、迷惑な曲)のだが、上手くモードを指定し、「和ハープ」だと思って曲を作れば、結構な事が出来る。フレットレスベースと箏。悪くないですよ。

トモちゃんにしても、箏の特性を理解した上で作曲やアレンジをしてもらへるのは嬉しいのださうな。なかんぢで弐曲ほどリハ。これ、3月13日「梶山シュウ日曜市」@JIMO CAFE、の為のリハで、まだあと、シタールの佐久間泰三、アサラトのMEMDER、とのリハをそれぞれやらねばならぬ。今週来週とリハが続く。

フと思ひ立ち、晩飯に「おじや」を作ってみた。昔、梶山家では壱ヶ月に一度、くらいの割合でおじやが晩の食卓に上がってゐた。今思ふにアレは月末の財政調製と冷蔵庫の掃除を兼ねてゐた賢いメニュゥだったのだな、と。

3日(木)-----------------------------------------------------------------------------------

雪、降っとるぞ!。「寒の戻り」といふやつか・・・。ヤバいな、ストーヴの灯油がもう残ってない。しかしまぁ家ん中にゐる限りは、致命的な寒さでないのが救い。

けふはMENDERと「日曜市」のリハ。まぁ半分は打ち合わせだったが、弐曲ほどアサラトを振ってもらふ。

彼は音楽パフォーマンストリオJama-Zのリーダー。アサラト(所謂パチカ)や口琴を操る。本名は伊東某、といふ。何故メンダーと呼ぶのかは知らん。なんか変わった青年で、はっきり云って音楽的に特に優れてゐる訳ではないのだが、不思議な存在感があり、オモロい。この企画が発動した時、まっ先に「彼を呼ぼう」と思った。一般社会人としての顔も持ちながら、ひょっと東京に行ってパフォーマンスして来たりする。そのフットワークの軽さもよし。

けふもリハの後、なんかネットで知り合った松山のアサラト仲間と初顔合わせに行く、と云ってゐた。ふ〜ん、やはりオモロいなこの青年。

何故か金子由香利の「時は過ぎてゆく」が頭を廻って離れぬ。かういふ事がよくある。唄に呼ばれてゐる、のだと思ふ。

4日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

けふはまづふじたよーこチャンとのリハ。明日の本番に向けて最後のリハだが、彼女もワシと同じく「あんまりリハをやらない方が良い、と思ふ」タイプで、ざっと通して40分ぐらいで終了。『長々とリハしたがる人ってゐるよねぇ』とか云ひながら・・・。さぁ明日の本番はどーなるでせうかー?。

その後ワシは、椎名まさ子&フライデーの仕事に。先月に引き続き弐回目のオリエンタルホテルのラウンヂ演奏。今回は特にこの為のリハをせなんだ。会場入りしてセッティングして、譜面の確認だけしたら、すぐ本番。40分ステージを参回。なかなかハードだ。

前回はジャズベ「ドゥナ」を使ったが、けふは「ヴァネッサ」で演る。これはもうベースではなく、てゆーか楽器ですらなく、自分の唄の延長にあるやうなモノに感じる。弾いてゐて全くストレスがない。ここん処指が腫れたりしてゐるが、そげな事はなんの問題にもならぬ。逆に、弾き過ぎてしまふ事に気をつけねばならぬ。

最近、珍しく割と色んなベースを弾き分けてゐるが、それは某人に『あまり同じのを使い過ぎて、もしそれがトラブったらどうするのか?』のやうな事を云はれ、まぁ日頃はそんな注進に耳を傾けはせぬのだが、その時は何故か、確かにさうだな、といふ気になったので。しかしまぁ此所数回のライヴで身に沁みた。やはりワシはヴァネッサを使い続け、壊れるまで使ふべきなのだらう。トラブったらトラブった時のことだ。

な訳で、まるでライヴのやうにのびのびと弾いたお仕事だったが、残念ながらけふはお客さんが少なかった。

ア、さうさう。しーなさんが昨日からのワシの想ひを鑑み、「時は過ぎてゆく」を演ってくれた。心身共に満足したが、まだ頭の中を廻ってゐる。今もこれを打ちながら、鼻歌で「眠ってるぅ あぃだにぃ〜」と唄ってゐる。唄がまだワシを呼んでゐる。


2週目

5日(土)-----------------------------------------------------------------------------------

頸元がぞくぞくして目が覚めた。あんまり体調が良くない。昨日のオリエンタル・ホテルの帰り道が寒かったからかな。

けふは異打樹!ライブツアー2011「BEATS VS VIBES」の前座でシェルター69に出演。異打樹、といふのは超絶ドラム菅沼孝三さんとデュジュの哲Jさんによる、ネオ・トライバルユニット、なのださう。はじめシェルターのナカハラさんから出演オファーをもらった時は、人違いだらう、と思ってゐた。ワシが知る限り菅沼孝三、と云へばプログレッシヴ・ドラマーの「手数王」菅沼孝三。どー考えても民族音楽系のモノと結び付くお方ではないのだ。

が、調べてみると、確かに「あの」菅沼孝三。此所数年はさういふフィールドでも有名らしく、これは知らなんだ、といふかんぢ。まぁタブラもダルブッカも変拍子バリバリだし、手数っちゃ手数多し、だよな(笑)。

まぁさういった主旨なら、て事で、ワシはバラフォンはじめ各種アフリカ楽器を操るふじたよーこチャンとの新ユニット「ゆるゆるアフリカノス(仮名)」で挑む。

世界的に名の知れるドラマーの来広公演で、当然っちゃ当然だが、シェルターは早い時間から超満員。座る席がなくなるぐらいみちみちの状態で、まづは最初の前座Room'sがスタート。これもディジュとパーカスのチーム。ワシは何度か共演歴があるが、見る度に上手になってるし、良いかんぢに成長してゐるな。

その後にユルくワシら。まぁ、あんなもんかなぁ。演ってる本人は良く分からん。友達は「良かった」と云ってくれたが・・・。アガってた訳ではないのだが、テンポが異常に速くなってしまってゐて、ループさせ始めてそれに気付きあとの祭り。自分が組み立てたバッキングでソロが弾けぬといふ失態(苦笑)。まぁてめーの実力不足を憂うしかないのですな。ゆるゆるアフリカノス(仮名)、ほろ苦いデヴーでした。よーこチャンごめんね。ワシがどっしりしてなきゃイカンのにね。

続く異打樹!は、まぁ流石の。菅沼さんのドラムは勿論、哲Jさんのディジュも、音が出た瞬間から、もう格が違う世界だ。まぁ・・・そりゃそーだらうな、とは思ふ。圧倒的なスキルに裏づけされたモノは、どんな精神論よりも説得力を持つのだ。

打ち上げはシェルター名物「賄い居酒屋」。ナカハラさんが腕を振るう美味料理を喰らう。ワシはおもに哲さんと喋ってゐた。菅沼さんも哲さんも割と早めに退席。ワシも明日は昼から本番だし、1時には退散。よーこちゃんとのデュオは、早速次のライヴが決まった。

6日(日)-----------------------------------------------------------------------------------

けふはしーシュで、お馴染み千田わっしょい祭に出演。だが、雲行きが怪しい。早朝はまだ日が出てゐたが、どんどん曇って来た。準備して家を出る頃には真っ暗で、もういつ降って来てもおかしくないかんぢ。あ”〜〜〜、夕方までもってくれんかなぁ。

が、願い空しく、しーなさんを拾い、会場に着く頃には冷たい雨が降り始め、時を追うごとに本降りになって来た。フリーマーケット出展者はどんどん店仕舞いを始め、当然客足も途絶える。が、ギャラを払ってもらふのに何もせず、では主催者に申し訳ないし、なによりワシらとて、来たからには演奏したいのだ。撤収命令が出ぬかぎりは演らう、と、雨の中を決行。わずかなお客さんにも演奏テントに入ってもらひ、目の前で唄う。

まぁ仲々味わひ深いライヴになった。閑散とした雨の広場に、唄声が響き渡る様はなかなかシュールだった。どーせなら即興ぽい事演ってもオモロかったかもね。

最後まで頑張って営業してゐたうどん屋さんが撤収を始めたところで、ワシらも退散。しーなさんと遅い昼飯を喰ひに行ってから帰宅。日記を読み返してみると、去年のこの時期のわっしょい祭にはFar east 〜で出て、手がかじかんでなにも弾けんくなるほどの極寒ライヴだったのだ。まぁ色々ありますねぇ、人生は。

7日(月)----------------------------------------------------------------------------------

デスクワーク色々。「白子」を弾かなくなって、手の痛みが落ち着いてゐる。認めたくないが、やはり原因はこの楽器か?。

しかし此所壱年弱の間に、指の血流障害や、手荒れ、腱鞘炎、など、明らかに「経年」を因とする劣化が、一気に顕著化の兆候。今気付くまでもなく、これからは「何もしない」でゐる事は「衰えてゆく」事に他ならず。今にもましてヨガやストレッチなどに励まんとす。幸いにも、地味なヨガの継続は多少なりとも効果あるやうで、此所数年は酷い体調の悪化がない。

しかしまぁワシは「健康な人間」になりたい訳ではなく、目指すはあくまでも「優れた音楽家」なり。

8日(火)----------------------------------------------------------------------------------

デスクワーク色々。東京の「じぶこん」の曲を採譜す。意外な変拍子などあったりしてオモロい。三茶でのセッション(3/25)が楽しみだ。

夜はシタールの佐久間泰三くんと「日曜市」のリハ。一緒に音を出すのは何年ぶりだらう?。シタールといふ楽器の特性上、ベースで基本土台をしっかり作れば、あとは上で遊んでもらふだけなので、ワシさえしっかり演れば大丈夫だ。泰三くん、相変わらずクールと云ふか、落ち着いた青年である。

「狂気」の域に達しさうなほど、目が痒い。イカンと分かってゐつつも、夜中にごりごりと掻いてしまふ。どーにかならぬかね?これ。

9日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

専門学校の卒業式に出席。久しぶりに大島紬を着る。男子生徒は全員スーツなのだが、どいつもこいつも着こなしがホストのやうで、見ててイタい。なんか全然着こなせないんだな、このコらって。女子の中には『お前は花魁か?!』と云ふやうな勘違い系もゐて、ただただ呆れる。ニポンの未来は愉しさうだぜワトスン君。

続く謝恩会にも出席。昼間ッからタダ酒タダ飯を喰ふ。かつをのタタキがあるので、白ワインを注文す。餞の言葉を贈るコーナーがあり、みんな長生きするやうに、のやうな事を云ふ。冗談と思はれたかもしれんが、本心である。みんな、つまらん事で死ぬなよ。芸術は生きてる限り磨かれるものだ。長生きしやう。

さらに夜は生徒主催の弐次会にも出席。ハイボールで焼肉を喰ふ。今になって初めて話すやつとかもゐて、なかなか楽しい。さらに参次回にも参加。適当な居酒屋で終電の時間までマッコリを。

まぁ、またどっかで会える。ひとまづは、Say Goodbye、なのだ。

10日(木)-----------------------------------------------------------------------------------

昨日、生徒達が寄せ書きを贈ってくれた。そこには半数以上の生徒から「センセイの笑顔に癒された」と書いてある。どの笑顔だらう?。そんなに笑いかけてやった憶えもないのだが・・・。まぁいいや。ありがとぅよお前ら。

ギターの弾き語りを練習す。いつもソロを演らせてもらってる、呉市は花Clubのライヴでは、今後ギターの弾き語りや、自作カラオケでの歌唱、積極的なカヴァーなどにもチャレンヂしてみたいと思ふ。出来ればしーシュでしか出来ない曲などもソロで唄ってみたい。パーカスとベースだけを録ったバックトラックを流しながらギター弾き語りすれば、それも可能になるのだ。

けふは女房がレーシック術の最終経過確認の為に九州は博多に遠征。のでシングル・ナイトを愉しむ。考へてみれば、うさぎが居ない、ホンマにひとりの夜は15年ぶりか。外食や店屋物の選択もあったが、昨日の宴会でフトコロが若干寂しい。ので、「独り呑み」をする事に。かつをのタタキ(好きだなこれ)、胡瓜の浅漬け、ごぼう揚げ、白身魚のパスタを拵え、超激安ワインを買ふ。わはは。

11日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

けふは急遽決まった「ゆるゆるアフリカノス(仮名)」弐度目のライヴ。その前にしーシュのリハ。「ゆるアフ」の対バンは、シンガーソングライターのカワちゃんなのだが、けふ今し方、急遽そのサポートをしーなさんが演る事になったらしく、かくして『しーシュ・よろず音屋・バラ売り対バン』が決定。

リハを終えて会場の加古町Otisに向かふ途中、地震速報が入る。かなりデカさう。マグニチュード7.5以上とか(この時点で)。ケータイ画面でチラと見た映像には、黒煙を上げる東京お台場の姿。?地震は東北と云ってなかったか?。さらに日本ほぼ全土に「大津波警報」。情報が錯綜してゐる。

リハを進める間にも、被害の拡大のニュゥスがどんどん入って来る。マグニチュード8だって?。

我々は我々のなすべき事、できる事を演るしかない。心を留めつつライヴを始める。カワちゃん+しーなさんのユルくて心地良いセッション。カワちゃん、聴く機会が多いがどんどんイイかんぢになって来てゐるな。ユルさに力強さも加味されつつある。このテの唄うたいにしては、ギターが上手いのも良い。バッキングに徹するしーなさんのサポートもグッヂョブ。

後続のワシら「ゆるアフ」は、こないだと同じラインナップに、よーこチャンのソロを加えた。今回は落ち着いて演れた、かな?。なんかまだ色々とオモロい事が演れさうなデュオです。楽しいライヴだった。

さて、撤収、解散して帰宅。ニュゥスは勿論地震の事ばかり。観測史上最大の地震だとか。東北地方に直接の知り合いは居らぬが、被害は広範囲に及び、東京もほぼ機能停止状態らしひ。安否は気になるが、ここで要らぬ電話回線を使ふ事は本末顛倒。無事を信じて、ぢっと待つ。信じられないやうな光景がTVで、ネットで流れてゐる。ひどい。

どうか、みんな、無事で。


3週目

12日(土)-----------------------------------------------------------------------------------

壱夜明け、更に明るみに出る地震の被害。想像を絶する天変地異。阪神大震災を上回る大惨事だ。津波の被害がとくに凄まじかったやうで、結構な大型船が悪い冗談のやうに町の真ん中に座してゐる。活断層の決壊によって、地形が変わってしまったのでは?、といふ推測。「壊滅」といふ言葉が何度もくり返されてゐる。ひどい、ホンマにひどい。

TVはもう地震のニュースオンリーで、見てゐると感覚が麻痺して来る。被害がなかった地域にまで、暗い気分が蔓延してしまってゐるやうだ。

その中で、カッポレとなにわのてっちゃんのジョイントライヴがあった。葛藤の中で決行することにしたらしい。うん。それで良い、と思ふ。直接被害を受けてゐないものが、打ちのめされてゐてはいけない。聞く処によると、各家庭の子供達がTVニュウスを見過ぎてすっかりダークな気分になってゐるらしひ。全放送局全てが、競うやうに衝撃的な映像を流し続けてゐるのだ。無理はない。誰もがハッピーを求めてゐる。

その思ひがあったかどうか、会場のフライングキッズは満員。カッポレ(初めて見た)のハッピーな雰囲気に、お客さんにも笑顔が拡がる。東京に家族がゐるてっちゃんは、流石に本調子とは行かなかったやうだが、それでも見事な演奏。さうだ、これで良いのだ。そなたらの覚悟、確かに見届けた。

ワシもやる。

13日(日)-----------------------------------------------------------------------------------

ンなわけで、梶山シュウ「日曜市」ライヴ敢行。

ちょいと変わった表現手段を持つ音楽家を、ワシが電気ベースと云ふ媒体で混ぜ返す、といふ主旨のイベントだ。スペシァルゲストに沖縄から3年ぶりに旅の友コウサカワタルくんを迎える。あんなこんなで集客がどうかな?と思ってゐたが、まぁ狭いジモカフェならでは、盛り上がる程には動員でき、それぞれの音楽を楽しんでもらへた様子。この日このライヴを選んでくれた皆さん、ありがとう。

まづはワシのソロを弐曲。「ストロマトライト」と「Dance」。これは『ループの使い方が見たい』と云ふワタルくんのリクエストに答へて、特にこ難しい操作の必要な弐曲を。

続きアサラトのメンダーと。ワシの「らのえてぃあ」と本人主導の即興を。アクロバティックなアサラトパフォーマンスに場内大ウケ。かなり緊張してゐたらしく、珍しく全然喋らぬメンダー(笑)。

弐番手は箏のトモちゃんこと木原朋子。「十六夜」と「れくいえむ」。奇しくも「れくいえむ」がホントに鎮魂歌になってしまったな。トモちゃんとは2年ぶりの本番だが、知らぬ間にづいぶんと「即興度胸」がついたな。

続いてシタールの佐久間泰三。「月のチャクラ」と「マタール」。泰三くんも3年ぶりくらいの本番。その間学業を優先して来たから・・・と思ってゐたが、それは杞憂に終わる。以前のセッションより、全然伸びやかに演ってゐる。素晴らしい。このセッションにはメンダーに口琴で入ってもらった。

皆がどう云う気構えで演ってくれたのかは知らぬが、メンダーもトモちゃんも泰三くんも、それぞれ以前の共演時よりも伍割増しぐらいの素晴らしさ。少なくともワシが知る限り、これまでの彼らのベストな演奏をしてくれた。素晴らしいセッションだった。ありがとう、みんな。

後半はワタル君のソロ。色んな楽器を取っ換え引っ換えして繰り広げるユルい音楽に、場内大ウケ。最後はワシとのデュオでシメる。良いイベントだった。観客で来てゐたしーなさんから絶賛。『この場所にあなたのニッチがあるし、ここにはあなたしかありえない』と。嬉しいね。

出演者全員とお客さんで打ち上げに(ア、トモちゃんは帰った)。意外なほど意気投合して語り合ってゐる、昨日まではそれぞれ知らぬもの同士だったヤツラを眺めながら、隅で静かに酒を呑む。確かにたいへん居心地のよいニッチだ。さうか、ここか、と思ふ。「日曜市」また演らう。

14日(月)----------------------------------------------------------------------------------

「この非常時に音楽なんて!」といふ意見が、「音楽家」から出始めてゐる。それは駄目だよ。音楽家が音楽に縋らずして、なにが音楽家だ。

そらぁ被災地のど真ん中で、今ライヴイベントを演れ、といふ訳ではない。だが、被害を受けてない地域の芸術家が「自粛」の名の元に、活動を休止する意味などない。『もっと情勢が落ち着いてから大きなチャリティコンサートをすべき』とかいふ意見もあるが、さういふ問題ぢゃないんだ!。音楽とイベントを混同してはいけない。

チャリティをしたければするが良い。だが、ワシらは(ワシは)、誰かの為に音楽をやってゐる訳ではない。伝えたい事があるからやってゐる訳でもない。ただ、やらずには居れぬからやってゐるのだ。それが音楽家といふものだ。大義名分を持たぬと音楽が出来ぬものは、既に音楽家ではない。

ンな事考えてたら、なんと被災地の福島から発信されたドラムンベースのU-streamを発見!。ここに挫けないアーティストがゐる。聴こえてるぞ!。

15日(火)----------------------------------------------------------------------------------

けふはフタコブリコズのライヴ。

朝からなんかやたらと血が滾ってゐて、やったるぞ、といふ気になってゐる。

さういふ意気込みでゐたからか、はたまたリハを見た対バンのCarrefour Saxophone Quartet(朋友藤井政美を擁する)の演奏の素晴らしさに感化されたか、我ながら凄まじいKYの暴れっぷりで(苦笑)、ソロにヴォイスにバッキングに暑苦しい程の全力投球。お客さん「ポカ〜〜〜ン」、てかんぢだった。そもそもカルフール〜のファン層はおもにクラシック畑の人々で、室内楽のやうな音楽を期待して観に来たところに、民族衣装に身を包んだハゲが出て来ていきなり「オィエェア〜〜!」とか叫んだら、まぁそら「引く」わな。

良いのだ。けふはさういふつもりで演った、のだ。ステージに上がる以上は、その日その日が最後のライヴかもしれぬ、と思って演るのみだ。いつか本当にその時はやってくるのだ。それが早いか遅いかは、まだ誰にも分からんのだ。演る。全力で演りつづける。

プレイの出来としては、ドン引きしてゐる感じのお客さん相手に、近年一番確かな事が演れた気はす。分からんものである。

打ち上げ中に、東京のゲンタさんから連絡。知人ミュージシャンの何人かは、既に東京を「脱出」してしまってゐる(昼に福島原発において何度めかの爆発があった様子)らしい。が、ゲンタさん本人は東京に留まり、行く末を見届ける覚悟でゐる、といふ。東京の混乱ぶりは凄まじいらしく、ついてはワシにツアーをどうするか?の話し。ワシが今回関わるゲンタさん以外の相手からは、今の処変更などの連絡はなし。ので、東京に「入域禁止令」とかが出るまでは、ツアーは決行するつもり。その旨、伝える。

家に帰り、女房にもその決心を伝える。女房は力強くうなづいてくれた。ワシは行く。

16日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

今回の大災害で、日本自衛隊の「救助隊」としてのクゥオリティの高さがクローズアップされてゐる。素晴らしい活躍のやうだ。既に19,000人を救出してゐる、といふ。被災地においても、粛々と規律や礼節を守る国民性と云ひ、これらは世界中に誇っても良い事柄だと思ふ。頑張ろう日本。負けるな東北。

が、福島原発の方は、どうやら最悪の局面を迎えてしまひつつあるやうだ。少しでも被害が拡がらない事を祈るほかはない。

日頃「意気に感ず」と思ってゐる音楽家、芸術家たちが、だいたいワシと同じ考えなのが嬉しい。どれも「個」を保ち、自分の意見を持ち、他者を思ふ心を失わぬ人々。流言流布に流され、無責任なリツィートをくり返すやうな人達はいない。

17日(木)-----------------------------------------------------------------------------------

けふは「乱葛〜MIDAREKAZURA」敢行。

社会意識が強い出演者が集まった感のあるイベントだが、あえて、いや、だからこそ、か、特に意識の変更なく、普通のイベントとしてやる。みな同じ気持ちだ。

会場のKOBAは八割程度の客入り。前回このメンバーでのライヴは、前宣伝せずとも店に入り切れぬ位お客が押し寄せたが、けふはやはり「自粛ムード」に抑えられてゐるのだらうか。思ひの他、集客が伸びない。まぁそれでも進めてゐるうちに人は集まり、最終的には満員となった。

まづ、冒頭に広島のDJ五反田氏と、牧瀬茜(ストリップ)のデュオ。普通にストリップだが、後で聞くと両者とも即興だったさうで、見事なシンクロに改めて驚愕。選曲と云ひ踊りと云ひ、素晴らしいセンスだった。

茜さんのトークショウを挟み、後半最初は、ワシと藤堂信行(ライヴペイント)のデュオ。勿論即興。赤と青を基調にした色彩に合わせて、空間的なアプローチで。流れを止めないまま大槻オサム(舞踏)が参入。この辺りからリズミックな展開に。茜さんが加わってからはやや民族音楽風に。あとはパフォーマーの動きを見ながら展開を合わせて行く。手近にゐたお客さんに時間の経過を聞き、約90分弱でフィニッシュへ。拍手と歓声がしばらく続く。成功、やね。

このコラボはけふで4回目。これまでは割と死生観をテーマにした重いかんぢのものに仕上がる事が多かったが、けふのは割と軽妙なものになった。大槻くんのコミカルな動きに茜さんも協調し、客席から盛んに笑いが起こるほど。ワシも結構笑いながら弾いたりした。面白かった。自粛などせずに演ってよかったね、と皆で乾杯。

けふはピッチシフター→ディレイ→ライン6→ループ、といふ接続。どっちかてぇと次々に展開して行く、といふかんぢの。会場の音の良さも相まって、大変気持ち良く演奏できた。う〜〜む、ワシはホンマにかういふのに向いてるんだなぁ。・・・まぁ、それも良いか。

結構な音楽的識者の方から絶賛を戴く。『あなたは天才の変態か、あるいは変態の天才だ』と。ありがとうざいます。まだまだ演りますぇ!。

18日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

東北の酒を買うと少しは支援になるのだらうか、と捜すも、意外に置いてない。

けふは少し手を休ませる事にす。左手小指の炎症(のやうなモノ)は一進一退。夕方からサロンシネマに映画を見に行く。『極悪レミー』といふ(笑)邦題で、云はずと知れた騒音ロックバンド、モーターヘッドのリーダー・・・てゆーか全てのロックンロールの総番長、レミー・キルミスターのドキュメンタリィ映画。

皮ジャンにブーツ&煙草。片時もジャックダニエルの瓶を手放さず、ギャンブル大好き。寝た女性の数は1000人以上。結婚は一度もしてないが、何人か子供がゐて(勿論親権放棄)、そのひとりはミュージシャン。まぁ「セックス・ドラッグ&ロッケンロール」を地で行くロックの権化。ほぼ全ての会話に「Fuck」が入る(笑)。その唄声(ダミ声)と爆音ベースは、65歳の現在も衰える事を知らず、並んで唄えば、あのメタリカですら優等生のお坊っちゃんに思へる。凄い存在感だ。

が、しかし「極悪レミー」といふタイトルとは裏腹に、場面のあちこちにレミーの「優しさ」が見れる。若いミュージシャンに対しても真摯に接し、インタヴーにも真面目に答え、パーソナリティの嫌みもジョークで受け流す。出待ちをしてゐるファンにも全員にサインをし、握手をし、一緒に写真に収まる。元恋人の亭主に『彼女は誰よりもお前を愛してゐる』と手紙を送ったエピソードも明かされる。無骨な頑固ものだが根は善人、といふまぁ男が憧れる男のタイプだ。

好んでモーターヘッドを聴く事はあんまりないけど、やはりかっこいいな、と思ふ。しっかし相変わらず凄いベースの音!(笑)。騒音計で音量を計るシーンがあって125dbとかいふ数値が出てたな。一般的な騒音レベルは、航空機のエンジンの近くが120dbださうです。

映画の冒頭、自宅で独り自分の朝飯(ポテトフライ)を作るシーンが、なんか可愛い。


4週目

19日(土)-----------------------------------------------------------------------------------

倉敷市の祭で、昔の生徒がライヴする、といふので見に行く予定にしてゐたのだが、イベント自体が休止(震災に考慮して、だって)になったとか。かういふ風潮ってホンマに良くない、と思ふのだがね。ワシが例年参加させてもらってる五日市のさくら祭(4月末)も、現在開催するかどーかを検討中だとか。祭全体をチャリティにシフトしてでも敢行すべき、と提唱しておいたのだが・・・、どーなることやら。

よって壱日空きの日となる。DVDで「犬神家の一族」観る。1976年作品。『遺産相続』とか『政略婚』とか『妾』とか、この作品で知ったやうな気がするなぁ。角川映画特有の役者のオーバーアクトが気になるっちゃ気になるが、作品として素晴らしいのでマル。大野雄二の音楽が特に素晴らしい。のちの「カリオストロの城」に通ずるモノを感ずる。

20日(日)-----------------------------------------------------------------------------------

けふも休み。上手い具合に雨だ。引き蘢る。

けふのDVDは「シャーロック・ホームズ」。2009年作品。名探偵シャーロック・ホームズを知らぬ人は居るまい。推理物語として世界的に著名なこの物語だが、この映画は原作における「武道の達人としてのホームズ」にスポットを当て、肉弾アクションものに仕上げた異色の作品(勿論名推理はあるよ)。オモロいが全体的に暗い画面(しかもCG多し)なので、目が異様に疲れた。

21日(月/祝)----------------------------------------------------------------------------------

16回目の結婚記念日だ。

毎年、この日はなるべく広島にゐて、某かのレヂャーをする事にしてゐる。晴れてゐれば動物園にでも、と思ってゐたが雨模様。ので、広島市現代美術館に行かん。サイモン・スターリング「仮面劇のためのプロジェクト」といふのが来てゐて、「う〜む」と云ひながら観る。暗がりの中で、独りで見に来てゐたカシラと遭遇。

別館のコレクション展は「ことばの窓、イメージの扉」。見知った小説や詩集の挿絵や描画、オブヂェなどが展示されてゐた。これはオモロい。「夜の魚」「月のたまもの」など、そのまま音楽になりさうなタイトルが多い。ある種の「歌詞」には違いないね。

夜は焼肉。クーポン使ってハラ一杯喰ひ、呑んだ。色々あったしこれからも色々あるだらうが、取り合へず16年、連れ添った。我々は「良き夫婦」に成れてゐるのかね?。

22日(火)----------------------------------------------------------------------------------

しーシュのお江戸ツアー前最後のリハ。

東京は予想以上の異常事態になってゐるさうで、そこは注意し過ぎる事はない、といふ。人によっては原発事故に怯えて、遥か九州にまで逃げてゐる者もゐると聞く。そこまでせんでも、とも思ふが、ワシとて決して甘く見てゐる訳ではない。もしかしたら「最後の旅」になる可能性だってある。だが、こないだ(反日運動の盛りに)中国に行った時も、覚悟の程度は同じくらいあった。帰れなかった時の旨を、ちゃんと壱筆書いて行ったし、今回もさうするつもりだ。

云ふなれば、どの旅だって「最後の旅」になりうるし、そして、何処で生活してゐたって、「最後の日」といふは必ず来るのだ。

23日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

クサクサする。かういふ時はヘビメタのVを見る。この人達の、ある種の「開き直り」とその純粋さは、時に勇気を与えてくれる。

今回見つけたオモロいのは「マノウォー」といふバンド。なにやら自分達以外のほとんどを「偽メタル」とし、我こそがヘビメタ、を標榜してゐる、とか。で、ここのベーシスト(リーダーらしひ)ジョーイ・ディマイオが最高。たいへんな親日家(しかもちょいと勘違い系)らしく「私はサムライだ」と公言し、レコード会社との契約書に血でサインをして、相手をドン引きさせた、といふ唯我独尊のヒト。その他インタヴーにおいても爆笑発言のオンパレード。

「あなたが『絶対にやってはいけない』と思ふ事はなにか?」といふ質問に『アンプの音量を下げる事だ、それをするぐらいなら死を選ぶ』

『私はカリフォルニア巻を食べる典型的なアメリカ人とは違う。納豆が少し乗ったものも好きだしあん肝も好きだ』

『偽メタルバンドの名を全部挙げてみても良いが、あまりに長過ぎて君のテープレコーダーは爆発してしまうだらう』

『ベースを持つ時、私は三船敏郎になる』

色々な質疑応答のあと、『君は我々を100%理解してゐる。きっと君はサムライなのだろう。私もそうなんだ。兄弟になろう』

んで、そのプレイてのが、なんか4本だけ弦(明らかにベース弦ではない)を張った楽器を、滅茶苦茶な音量で、滅茶苦茶に速弾きする、といふ。んでその姿があまりカッコ良くない、ていふ・・・(ファンに怒られるかな)。てゆーか、これベースって云ふんだらうか?(笑)。いや〜最高だわ。

24日(木)-----------------------------------------------------------------------------------

ツアー前日。のんびり準備したい所だが、さうも行かず。荷物のパッキングはいつも通りだが、世が世なので、今の東京でなにが要ってなにが要らんのかさっぱり見当がつかぬ。まだまだ強い余震が続いてゐるやうだし・・・。懐中電灯と予備の電池だけは持って行こう、と。あとはまぁ、どーにかなるだらう。どーにでもなれ。

春の東京で壱週間以上滞在、と云ふのは久しぶりだな。在京の友人によると、街がとても静かで暗いのださうだ。しっかり見て来ようと思ふ。それは多分これから先、この国の行き着く姿なのだらうからね。まさに「東京見聞録」だな。

な訳で、アディオス。

25日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

上京。


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