10月


1週目

1日(日)------------------------------------------------------------------------------------------------

F楽器店発表会のリハでスタヂオに一日缶詰め。ワシの生徒達は皆よく練習してゐて良い。唄の生徒にひとりだけ『皆さんよろしくお願いします』と他のメンバーに云ったヤツがおった。かういふ礼節を弁えたヤツが、タマにゐる。良い事だ。

10:00〜19:30まで、講師演奏も含めたリハやって終了。ドラム科のK、ギターのIとC、シバちゃん、パイグら、男6人で飲みに行く。ワシは車なので最後まで烏龍茶。全然、問題なし。もしかしてワシ、酒なくてもいいんぢゃないか?。途中、気心知れてゐる店長が、『ワシ、ちょっとラーメン喰って来るけぇ後よろしく』と出ていってしまひ、ワシらは留守番。ワシとKだけ、日付けが変わった時点で先上がり。来週は本番だ。

2日(月)-----------------------------------------------------------------------------------------------------

11月の東京単発遠征に際して、「誕生日割」なる格安システムがあると聞く。それに限らずとも、旅行代理店に行って、旅の予定とか目的その旨伝えれば、大抵相談に乗ってくれる、と聞いたので、行ってみた。しかるに某店の店員は椅子から立ちもせず『11月?もう予約出来ませんよ』と吐き捨てる。「そーなんですか?」と云ふと、まるで「そんな事も知らんのか」とでも云わんばかりにパンフをよこし、『ここに色々書いてあるので読んでみて』とのたまいよった。かういふ処に、スキンヘッド&ピアスのやうな者が行っても、マトモに相手にはしてもらえぬ、と云ふ事が良く分かった。やはりワシらデラシネびとは「自分の路は自分で探せ」といふ事か。

しかし、さすがにああ云ふ扱いを受けると、テンションも下がるわ。店を出てすぐの処のゴミ箱に、パンフ一式捨てて帰った。

3日(火)-----------------------------------------------------------------------------------------------------

仕事の後、しーなとシュウ+ツンのリハ。ツンちゃんはビシっと決めて演るのがあんまり好きではないので、要所は押さえつつ好きに演ってもらへるやうに工夫す。「ラクダ」とか、はやっぱり難しさうだな。自分らは作る時、これが変拍子だなどと考えてはおらんからなぁ。途中、ローカルプロレス団体『ダヴプロレス』の連中が来て、公開リハーサルとなった。椎名さんが、自分独りで持ち運べる(ちょいとしんどいが)新しい鍵盤を入手。これで機動性アップして、色んな処で演ってみますかね。

最近、何故か椎名さんに会う時にイライラしてゐる事が多くて、いかんなぁ、と思ふ。腹が減ってるからだらうか?。てな訳でファミレスで遅い晩飯。ちょいと最近、自分の実情にフラストレーションが溜まってゐる気がする。ライヴせないかんな。

4日(水)----------------------------------------------------------------------------------------------------

歌詞が出来ぬのは本気で作ろうとせんからだ、と思ひ、真剣に取り組んでみる。10:00AMから紙を前にして、言葉の世界に没頭す。テーマを探り、言葉を選び、捨て、また選び、を繰り返す。とりあへず1曲ぶんが完成。ワシはいわゆる『詩を読む』といふタイプのソングライターではないので、実際にライヴで唄ってみんと、真価のほどは分からぬ。まぁ、いづれ、ね。

また太ってきた気がする。

5日(木)--------------------------------------------------------------------------------------------------

ワシはツアーの時もレッスンでも、同じ鞄を使ってゐて、これが巷で「梶山のくそ鞄」と呼ばれてゐるほど年代物。永年の酷使により、布地も薄くなって、モノを入れないとちゃんとした形にならない。なにより、入れたモノが汚れるやうになったのは良くない。さすがに買い換えの必要を感じ、東急ハンヅに行った。以前、¥600でディパックがあったので、これは良い、と買ったが、やはり安物は2年もたなかった。ちゃんとしたモノはそれなりの値段がするのだ。色々考えた末に、¥3800の多機能デイパックがあったので、それにす。

北九州のテイさんこと村岡達也から国民文化祭(長門市)の資料が届いた。結局、ワシはソロでの出演はなし、ZEKUでの参加のみ、といふことになったらしい。当初の予定とは違ったものになったが、まぁ仕方ないか。ZEKUで演るのも久しぶりで、それはそれで楽しみ。期を同じくして四国の三宅さんから、今治の某高校の文化祭への出演オファーがあるが、ちょうど東京行きの日と重なってゐた。高校の文化祭に参加するなんざ、それはオモロかったらうに。残念。

6日(金)--------------------------------------------------------------------------------------------------

朝のロードワークが肌寒くなってきたな。ほぼ毎朝この運動を続けてゐるのに太ってきた、といふのは、明らかに喰ひ過ぎなのだらう。ちょっとセーブしやう。確かに最近、飯が美味くて、良く喰ふ。ビールも美味いし。

仕事して、晩飯の買い物して、本屋で立ち読みして、家に帰ってこれを書いてゐる。変化に乏しい日々である。嵐の前の静けさか、それとも、緩やかな破たんへの途上なのか?。


2週目

7日(土)------------------------------------------------------------------------------------------------

アクターズスクールでギターのレッスンを開講す。家を出て30秒もせぬ頃、先方から電話が入り、受講希望者がゼロにて打ち切り、といふ報せ。仕方なく府中町のみくまり境て処に行ってディジュリドゥを吹いてうんざり気分をなだめる。その後、フツーにレッスン。

夜はしーなとシュウのリハ。むか〜しワシが作った「またたび」といふ5拍子の奇妙なインストゥルメンタルを持って行く。好評。「最近、この日誌での私の書かれ方ってどーなのよ?」と椎名さん。確かに以前のワシは、椎名さんを『仕事に使ってくれる人』として接してゐたが、最近は『バンド仲間』として認識してゐるせいか、歯に衣着せぬ事も平気で云ふやうになった。従って、起こった事を割と忠実に書いてゐるこの日誌でも、歯に衣着せぬ事を書いてしまふのだ。ごめんなさいねぇ。

8日(日)--------------------------------------------------------------------------------------------------

さはやかな秋晴れ。ちょいと風邪っぽいのだが、あまりによい天気なので、久々に女房を誘って散歩す。車の少ない路を選んでてこてこと歩く。途中、腹が減ったので、巨大なスーパーの中にある中華料理屋に入る。全然期待せずに焼そばと海老玉定食を注文したが、これが結構本格的に美味い店だった。また来やう。更に歩いて食材専門店に行き、アンチョビ、クミン(粒)、ルートビア、チーズ、ワインなど、具体的にはそれほど必要でないものを買い込む。

日曜日が休み、と云ふのはよい。しかし、ここんところ全然日曜礼拝に参加してない自分を思ふ。信仰に疑問を持った事はないが、「教会」といふ組織に属する、といふ事に、少し納まりの悪さを感じる、最近の自分である。

9日(月)---------------------------------------------------------------------------------------------------

F楽器店秋の大発表会。7:00amに起床して会場入り。今回、段取りがあまり上手く行っておらず、かつ出場する生徒の数が少ない、といふかんぢになり、なかなか裏方作業が大変だ。それでもまぁ生徒と一緒になって、お祭りをやるみたいなかんぢで演るのは、仲々に楽しい。ここの発表会に参加するやうになって、既に15年が経つ。ちなみにワシは数年に一度のペェスで、よその科の女子生徒から不自然に人気が高まる。今年はまぁ「当たり年」だったやうで、数人の娘から写真をねだられました。へへへへへ。

気合いの入った講師演奏も無事終了。生徒もスタッフも一緒になっての打ち上げ。泊まる準備をして来てゐるので、心置きなく呑む。2:00頃解散。他の皆はタクシーや代行で帰り、ワシ独りだけ教室に泊まった。

10日(火)------------------------------------------------------------------------------------------------

ぐむぅ。少し二日酔い。日射しが鋭い。アイスなぞ喰って胃が落ち着くのを待ち、帰りがけに銭湯に寄る。サウナ→薬湯、のサイクルで酒を抜いて昼には帰宅。

軽くメシ喰って、けふは休みなので、電車で市内まで出て映画見る。手ぶらで街に出るのは久しぶり。「ワールド・トレード・センター」を見るつもりだったが、気が変わって「レディ・イン・ザ・ヲーター」。ヌ〜〜〜〜〜〜、相当に無理のある現代のおとぎ話やね。ん〜〜〜〜〜なんなんでせう?この非爽快感は・・・・。気分を変えて書店に寄り、垣根涼介著「ギャングスター・レッスン」買う。たいへんオモロかった「ヒートアイランド」の続編。さらに最新刊「サウダージ」へと続くらしい。しばらくは読みたい本が尽きぬな。

11日(水)---------------------------------------------------------------------------------------------------

けふも休み。昨日の雪辱で「ワールドトレードセンター」見に行くべきかだうか迷ふ。が、結局行かなんだ。その代わり、なんかフとした事でスゥィッチが入り、2時間ぐらいで新曲が3ツ出来る。インストの「Ealy in the lands」。歌詞も勢いで書く。ソロ用の「きみはたれか」、しーなとシュウ用の「年をとった鰐」。おぉ、最近あれほど創作に対するモチベーションが上がらなんだのに・・・・。かういふ事もある。

歩いて買い物に行き、立派な鮭があったので晩飯はちゃんちゃん焼きにした。

12日(木)------------------------------------------------------------------------------------------------------

11:00amよりSoe'sの練習。この時間にバンド練習するなんざ、なん年ぶりか。けふは現時点で通せる曲を全部ざっと演ってみる。なんかこれまでエライ時間をかけてゐるのに、ぢつはまだ4曲しか完成してないのだね。本当のところ、このユニット用に書き下ろした曲も、まだ無いのだ。う〜む、頑張ってもっと書かなきゃ、ね。

レッスンが恐ろしい虫食い状態。3:30から5:00までやった後、なんと8:30まで空いてしまふ。一旦家に帰って来ようか、などと考えてゐると、タイミング良く椎名さんから連絡があり、機材運搬用のキャリーを買いたいので付き合え、との事。二人して東急ハンヅをうろうろ。買い物とは云へ、美女との日中デートは楽しいものである。お陰でよい暇つぶしになった。

夜は女房とデート。リストランテでカレーうどんと寿司を喰ったが、その後どうした事か下痢が始まる。あれ?。

13日(金)-------------------------------------------------------------------------------------------------------

専門学校でのレッスン中、CDとMDを走らせるデッキが壊れた。仕方ないので授業打ち切り。ん〜〜みんなしてワシに仕事をさせぬやうにしてゐるな。ホンマ働いてないなぁ・・・。帰り、JRの駅に寄り、噂の「のぞみ早特きっぷ」といふのを買った。東京までの往復が¥30,000。正規の料金より¥6,000以上安い事になるのか。ふぅん。

家で質素な昼飯を喰ひ、スタヂオに行ってソロの練習す。けふはマイクも使ってみた。1時間半ほど唄い込む。帰りがけ、スタヂオの下で仏陀くりに会った。おぉぉ、久しぶり。なん年ぶりか。くり「シュウさんこっちに居るんぢゃ」と云ふ。なんか時折これ云はれるのだが、どうもワシは広島に居らんと思はれてゐるフシがある。居ますよ、仕事ないけど。昔はよくこの仏陀の連中と、朝まで呑んだものである。


3週目

14日(土)------------------------------------------------------------------------------------------------

家で仕事の準備してゐるとカシラから電話。明日の野外イベントがどうも当初ワシが聞かされたものと違うものになってゐる事が判明。だれがイベントを仕切ってゐるかを確認せず、また最終的なチェックを怠ったのはワシの責任だ。思い付く限りの人に断わりの電話を入れ、ミクシィや掲示板その他にも訂正とお詫び文を書き込む。間に合ってくれればいいが・・・。

夕方、アクターズのレッスン。数年前にここを辞めた生徒が遊びに来てゐて、今は「こっち側」に近い処で、ライヴ活動などしてゐる、と云ふ。いいね。

夜、しーなとシュウのリハ。完成した新曲を持って行く。曲を作る事に関しては、明らかにワシの方が一日の長がある訳だから、ワシがもっと椎名さんの良いところを引き出せる曲を、沢山書かなイカンね。明日のイベントの会場(らしい)に行ってみるも、まだなんの準備もない。朝から演るっていふのに、山台ひとつもセットされてない。ホンマに此所で演るのかな?。また違ったり、とかってないだらうね?。

15日(日)-------------------------------------------------------------------------------------------------

椎名さん家に寄って其処からタクシーで会場入りす。近付いてみても演ってるかんぢがないのでおいおい、と思ったが、あぁ演ってる演ってる。絨毯が敷いてあるだけの会場だった。なるほど。結構知り合いが出てゐて、てゆーか出演者のほとんどが知り合いだった。かういふユルさが油断を呼んで、昨日の失敗に繋がったのだ。以後注意。けふはしーなとシュウの他にもFar east loungeでも出演す。

さて、しーなとシュウとしては、このテのイベントに出演するのは初めて。ましてやけふは特別ゲストとしてツンちゃんをパーカスに迎え、いつものデュオともちょっと違う。一応先週3人でリハをやったのだが、大方の予想通りツンちゃん曰く『憶えとるもんか』。まぁかういふのを経験するのも椎名さんには絶対にプラスになるだらう。てな訳で本番が始まる。ステージ上は音が歪みまくりで、果たして会場にはどんな音が出てるんだろ?ってかんぢ。後で聞いたらやっぱり歪んでたって・・・。まぁユルいイベントやから。

まぁまぁ良いのが出来たんぢゃないか?と思ふ。椎名さんも今まで見た中で一番伸び伸び演ってたやうな気がした。「夜中に猫が鳴いてゐる」などの変拍子ものは、さすがにツンちゃんと云へどもシンクロ出来なんだ様子。珍しく悔しがって「も1回練習せんか?」と云ふ(笑)。

終了が5:00と云ふ事もあり、近年珍しい早い時間から打ち上げ。いいね、かういふのも。結局日付けが変わるまで飲み続け、ミュージシャンそれぞれの本性が現れる。最近カシラが呑むとやたらとワシに絡むやうになった。椎名さんとタクシーを拾って退散。一日強い日射しにあたってたいへん疲れた。

16日(月)-------------------------------------------------------------------------------------------------

缶ビールを9本と吟醸酒を呑んだ。さすがに気分悪い。起きてスゥプを呑み、女房が仕事に出て行くまで寝てゐた。もそもそと起き出し、素麺を茹でて喰ふ。休みなのでどうしやうか、と考え、映画を見に行く。「ワールド・トレード・センター」。云ふまでもなく9.11の事が描かれてゐる。飛行機がぶつかったりするエグいシーンはなし。ストーリィが進みはじめた時には、既に貿易センタービルが二つとも黒煙を上げてゐる、といふ。

主人公が救出されてゆくシーンなどではホロっと来たし、会場からもすすり泣きの声が聴こえたりしたが、全体的にはちょいと感想が述べにくい映画である。まぁノンフィクションな訳だから、ねぇ。極めてアメリカ的な映画といふか・・・・・。

17日(火)--------------------------------------------------------------------------------------------------

誕生日の朝は静かに明けた。いつものやうにロードワークして、いつものやうに朝飯を喰ひ、いつものやうに仕事に行く。昨年の誕生日は、自分に残された時間を初めて意識して、ちょいと愕然としたが、今年は特に動揺はなかった。まぁ慣れたのかね?。

最近、ターコイズ(トルコ石)に興味があるワシを察して、女房が首飾りを贈ってくれた。自分の誕生石、といふ訳でもなく、ワシは昔からこの、ある意味チープな輝きを持つ宝石が好きなんである。ありがとね。早速それをブラ下げて仕事に行く。

夜も女房とささやかなパースデイ会食。居酒屋とファミレスとパスタ屋を協議にかけ、パスタ屋にす。ビール→ピザ→ワイン→スパゲティ→ワイン→オードヴル。ヂョリーパスタでこんなに腰を据えて呑む客もあんまり居らんのではないか?。家に帰って冷蔵庫の奥で眠ってゐたワインを更に追加。かうしてわたしは41歳になった。

18日(水)--------------------------------------------------------------------------------------------------

けふは色々と広報活動のアレ。10/27のライヴのポスターを作り、11/3の東京遠征のフライヤーを郵送に出す。レッスンはますますヒマになって空きが目立つ。ヒマな時は色々とつまらぬ事を考えてしまうので、精神衛生上、良くない。最近、日本の古代の音楽に興味があり、まだ見ぬ地を思い描きながらディジュリドゥを吹く。

こないだTVの番組で中国障害者芸術団の「千手観音」を特集したのをやってゐた。これがNテレの深夜系だったのでイヤな予感はしたのだが、はたしてその最悪のパターン。なんか訳の分からんバラエティ形式にして、下らん司会者や若手タレントなどを配し、つまらぬコメントを入れさせる。せっかく練習風景や団員へのインタヴーを録ってゐるといふのに、妙な間を持たせたり、タレントの変なコーナーを挟んだりと、ツギハギの構成。さらに酷いのが海外のメディア取材は初、などと紹介してゐる。ワシは以前、元テニスの松岡修三がこの団体に真摯に取材したVを見てゐる。だからこそこの団体を知ってゐて、だからこそ楽しみにDVDに録画したのだ。肝心のスタヂオでの本番演技(これは確かに世界で初らしい)も、つまらぬカメラワークの小細工で、全体の美しさが全く撮れてない!。

そもそもこんな高度な芸術表現を、バラエティ番組に仕立て上げるなど、無礼にもほどがある。恥を知れNテレ!。

19日(木)--------------------------------------------------------------------------------------------------

ワシは週に1度か2週に1度の割合で、ベースではなくピアノかギターでオリジナルを唄う、といふ練習をする。これは、ベースだけで伴奏をしてゐると、何故か必ず微妙に唄のピッチが低くなってしまふのを修正する為。これはワシだけかと思ってゐたが、他の「ベースと唄」の組み合わせのアンサンブルを聴くと、やはりそのほとんどが、微妙に唄のピッチが低いのである。特にワシの場合、フレットレスを使ってゐる分だけ顕著で、たまに自分でもあからさまにそれに気付く事がある。それに慣れてしまわぬ為の練習だ。

まぁ『ぢゃ無理せずにギターかピアノで弾き語りすりゃいいぢゃんか』ってハナシなのだが、ね。

20日(金)---------------------------------------------------------------------------------------------------

シンガポールで毎年行われてゐる世界最大級のワールドミュージックフェスティバル「WOMAD」に、キキオンで参加しませんか?といふハナシが、ぢつは少し前から来てゐて、その後どうなってんのかな?てかんぢ。勿論ワシはオッケーしましたが。

ワシが春のツアー中、たまたま立ち寄った書店で、岩波新書の「世界の音を訪ねる」といふのを買った。著者は久保田麻琴氏。「夕焼け楽団」のあの久保田氏である。上述のWOMADなどの事も書かれており、興味深い内容で楽しく読み切ったのだが、巻末の謝辞に『岩波の十時由紀子さんへ』とあり驚いた。キキオンの十時さん、である。さうか、この人は岩波の人だったな、と納得したものだが、そのツアーの後半、東京で久しぶりに会った十時さんが「御中元です」とこの書をくれるまでは、そのことを忘れてゐた。

そしてその縁で、ワシが参加してゐたその時のキキオン+リズマクノムバスのステージを、久保田麻琴氏が見に来てくれたのである。世界中の音楽を耳にして来た久保田氏が「これはオモロイ」と云ってくれ、次回のWOMADに出演してみては?といふ事になったのだ。氏曰く『これは世界に出るべき音でしょう』との事。

まぁどうなるか分からんが、実現したら楽しい事だらう。一応メンバーは皆乗り気のやうだが、如何せんキキオンは他の仕事を持ってゐる人達だし、そもそもこれまでもあまりかういふ大仰な事に関わらずにやってきたバンドなのだ。さぁ梶山シュウ、小判鮫の立場とは云へ、DVDに引き続き海外デヴーと相成るでせうかー?。


4週目

21日(土)------------------------------------------------------------------------------------------------

女房が服やらCDやら、身の回りの使わなくなったモノを売りに行きたい、と云ふので付き合ふ。CDはちゃんと査定をしてくれる処でないと二束三文でしか取ってくれんので、ワシの馴染みの買い取り商に連れてってやる。良い小遣いにはなったやうだ。その後カレーうどん喰って、アクターズのギターレッスンに行き、自分のクラスも見る。

仕事の後はいつものやうにしーなとシュウのリハをして、けふは更に明日のイベントの為のツンちゃんを交えたリハもやる為に市内に出る。ツンちゃんの店PICOには、奇しくも明日のイベントの実行委員会のおっちゃんらが集まっており、公開リハとなる。明日、ワシらは神楽団の演目二つに挟まれて演る形になるらしひ。いや〜〜〜こら仲々シビアやな。前、このニッチの出演でものすごいヤジられてゐたバンドを目撃してゐるだけに・・・。

22日(日)-----------------------------------------------------------------------------------------------

曇天。けふは野外ステージなので雨が降るとちょっとナンだな。昼過ぎ椎名さんを迎えに行き、そのまま会場入り。

けふのイベントの正式名称は「沼田商工会いきいきフェスタ」。なんか不思議な縁で繋がり、参加させてもらふやうになって4年目。実行委員の皆さんもほとんど顔馴染みで、「今年もよろしく」とあちこちから声がかかる。五日市の桜祭りと云い、地域密着型イベントに関わりの多いワシ。何故か自分の住んでる町のそれには縁がないのだがね。

昼過ぎからバンド演奏が始まり、ワシらは会場でビールを呑んだりしながらのんびりと出番を待つ。天気はなんとかもってゐるかんぢ。

日が沈みはじめた頃から神楽が始まる。会場は立ち見の満座。しーなとシュウ+ツンは、ぶっちゃけ云えばその休憩時間の演奏だ。まぁだからこそ半端なモノは出せない、と判断されてワシらへの出演依頼となった訳だ。しかし当然プレッシャーは感じるよねぇ。

これがまたホンマに相当に大した神楽で、もともと神楽好きなワシはすっかり観客となって楽しんでしまふ。涙まで出てしまった。その神楽の人達が神聖としてゐる舞台の合間に立つ訳だから、ワシも敬意を払って靴を脱いでステージに上がる。主催者は『気にせんでええよ』と云ふてくれるが、まぁそこは、ワシなりに。ね。

本番はとてもいいかんぢに演れた。MCはほとんどなしで、つらつらと曲を演る。なにせ客の半数以上は神楽目当てのお客だから、100人中10人ぐらいをステージに注視できればオッケー、と思ってゐたが、結構沢山のヒトが真剣に見て聴いてくれてゐたやうだ。媚びを売るでもなく、投げやりに演るのでもなく、ただ、音楽を演奏する者としてやるべき事を演り、それでまづまづの反応を得た訳だから、これは良しでせう。ツンちゃんはやっぱり肝心な処でシンクロ出来ずにコケてゐたが、まぁそれも御愛嬌。先週に引き続き、えらく解放されたかんぢで唄ってる椎名さんを見て、ユニットに誘った甲斐があった、と納得す。

ワシらが演り終わった途端に雨が降り出し、神楽の後舞台は雨の中で、となってしまったが、ワシも含めて熱心なファンは冷たい雨をモノともせずに最後までの熱演を見守ってゐた。良いイベントだった。かういふ舞台に立たせてもらふたびに、『音楽ってこれで良いんだよな』と思ふ。うん。これで良いハズなのだ。

打ち上げはツンちゃんちで粛々と。もっと沢山ヒトが来るものと思ってゐたが、ツンちゃん、ワシ、椎名さん、とツンちゃんの生徒二人(♀)ですき焼きを喰ふ、といふ、家族の晩飯、のやうな打ち上げとなった。これはこれで仲々。

23日(月)----------------------------------------------------------------------------------------------

Soe'sのリハ。けふはマサミの曲(9/8拍子のとんでもないユニゾン)を繰り返し練習。このバンドではワシは定礎のキープに務めた方がよいと思はれ、さうなるともう一人ぐらい強力なソリストがメンバーに欲しい気もするな。持続音の、ナニか・・・。うーむ。

仕事に必要だったので、久しぶりに「こっこ」を聴いた。うむ、いいね。アレンジの妙、とかも思ふが、やっぱり骨となってゐる楽曲の存在感があるから、これだけのアレンジが生きるのだ。考えてみれば、この人と椎名林檎の後、雨後の筍のやうに女性シンガーソングライターが湧いて出て来て、そのほとんどがこの二人のどっちかの亜流だったねぇ。そのテの噺の常で、亜流はほとんど見分けが着かぬ。耶異駄非吐実なぞ酷いもんだったなぁ。

さういや生徒の中にひとり『いつか椎名林檎のバックで演奏するんだ!』と息巻いて上京してったヤツがゐるが、その後夢を果たせた、といふ報せは聞いてないな・・・。元気にしてンだろか?。

24日(火)----------------------------------------------------------------------------------------------

来月、長門市で開かれる国民文化祭のフィナーレステージで、ワシの「不知火」が演奏される事になった。そのリハの模様の報せが実行委員のTさんから入った(予算の都合でワシは欠席)。まぁ順調だった、といふ。しかし本番の日はリハなしと云ふ事なので、大丈夫かいな。ワシとしては多分今年最後の「遠征」になるので、ビっと締めて終えたいものだね。

オフクロからも電話。ガンの手術で入院してゐた叔父貴が、無事退院した、とのこと。良かった良かった。「返しは要らん」とあれほど云ったのに見舞い返しを持って来てゐる、とか。も〜〜〜ホンマに年寄りときたら・・・!(苦笑)。

25日(水)-----------------------------------------------------------------------------------------------

朝のロードワーク中にすれ違う女子中学生が、昨日から挨拶をしてくれてゐる。昨日は誰に云われたものか分からず、結果として「無視」してしまった形となり、あぁ悪いことしたなぁ、と思ってゐた。そしたら今朝も「おはやうございます」と云ってくれたので、けふは迷わずワシも挨拶を返した。良い気分である。

実家に寄る。元々身体が丈夫でないオフクロは、今回も某かで寝込んでゐる。代わりに親父が厨房に立って鼻歌まじりに肉ぢゃがを作ってゐた。こちらはもうすぐ80歳だが、ますます元気。耳は遠くなってゐるみたいだが。叔父貴の内祝いとビールを半ダースもらって帰る。

夜、帰宅すると、少し前までワシの生徒だった人が亡くなった、といふ報せ。90歳過ぎてガンから生還する老人がゐる一方で、ワシらはそれほどまでに、この世界からの「祝福」を受けられてゐないのだらうか?。

26日(木)--------------------------------------------------------------------------------------------------

づっと読みたかった土取利行の著書「縄文の音」を入手した。「古」といふ言葉は、ナニかワシを刺激するなぁ。「古代音楽」とか「古武道」とか、あと「古生代」とか。その言葉の響きだけで広がって行くロマンを感じる。実際には「古」といふ事の意味はよく分かってゐるよ。分かってはゐるが、まぁそこは・・・・ねぇ。

27日(金)---------------------------------------------------------------------------------------------------

午前中から午後にかけて、色々と雑務をこなしてゐたが、けふはジモカフェにて広島唯一のスティック奏者ラムジィとのカップリング。5:00に会場のジモ・カフェに入る。ラムジィと一緒に演るのはほぼ2年ぶりだ。最近彼は立岡智志さん(Dr)とのデュオ形式で演ってる。初めて一緒に演った時と比べれば、だいぶスティックの扱いがこなれて来たやうに思へる。しかし見れば見るほどややこしぃ楽器やな。

けふのワシはいつにもまして唄もの中心のセット。例によってあんまり決めずにステージに上がって、その場で構成を考えていく。お客さんは満員。食い入るやうに聴いてくれるお客さんで、演り易い。

演目:月の路/少年(新曲)/きみはたれか(新曲)/こきりこ節/夜の駱駝/此岸の朱/丘にのぼる時/らのえてぃあ/坂に続く路の途中で、の9曲(多分。あんまり憶えてねぇや)。坂に続く〜は例の一昨日訃報を聞いた知人への追悼の意を込めて唄った。オルカの人気曲だったレパートリィだが、ソロで演ったのは初めて。メモリーループを使ったとは云へ、仲々のモノに仕上がったんではないかと思ふ。

けふは組み合わせ的にオモロかったお陰か、ワシを初めて聴くお客さんが多かったやうだ。そんな人にもちゃんとアッピール出来たやうで一安心。しかし一部の人からは『けふはえらいポップだったね』といふ指摘も受けた。元々ワシはポップな事を演ろうとしてるんですがね。

だめだ・・・眠い。これ以上ちゃんとした文章が書けさうにない。


5週目

28日(土)------------------------------------------------------------------------------------------------

ゆんべはラムジィ、立岡さん、ジモの佐藤さん、それにMさんといふちょっとセクシィな女性の5人で立ち飲み居酒屋で打ち上げ。一説では日本人より美しい日本語を話すアメリカ人、であるラムジィの、おでんについての考察やらで盛り上がり、しかしかなり寒くなって来たので、ワシは2:30頃帰った。

夜は「インドこてこて古典」といふ、シタールとタブラのデュオライヴを見にPICOに行く。「古典」である。「ラーガ」である。当然、長い。最初、インド音楽についての説明があり、シタールだけによるアーラープ、これが20分ぐらいか。タブラが入ってターラに移項して30分。これで「前半終了」。少し休憩を挿んで「後半」が40分ぐらい。これで「1曲」なのである。まぁ全部で1時間半ぐらいだから古典にしては普通な方か。

即興には違いないのだが、ジャズやロックにおける即興とは全然違うモノで、技術的には両者とも若いのに、大したもんだった。ただ、あそこまで説明せんでも良かったんではないかな?。『なんでこんなに長いのか?』も、聴けば分かるもんだし、見てりゃ即興だってのも分かる。それをラーガがなんのターラがどうの云われたら、インド音楽のアカデミックな部分だけが浮き彫りにされて、一部のジャズが陥ってゐる、「あのかんぢ」になってしまふやうな気がする。まぁワシのやうな「えせニック」に云われたかないだらうが、ね。

29日(日)------------------------------------------------------------------------------------------------

金、土、と結構呑んだので、けふは「寝る日」とす。朝起きてメシを喰ひ、ウィークリィニュゥスを見て、昼過ぎから寝る。夕方起きて買い物に行き、女房の作ったカレーを喰って、本格的に寝た。「縄文の音」、読むとすぐ眠くなる。

30日(月)--------------------------------------------------------------------------------------------------

楽器店会議。白熱した意見交換の後、新人の担当者に『○○ちゃんはどう思うね?』と振った途端、ヴワっと泣き出してしまった。無理もない。彼女は今年の半ばに入ったばかりで、前任者との引き継ぎも上手く行ったとは思えぬ。おそらく分からん事だらけだったのだ。これまでもイッパイイッパイだったのだらう。この人のお陰で随分助かった事も多いのだ。ごくろうさま。これからも頑張ってね。

昼からは、12月に行われるスペイン協会のイベントの打ち合わせ。こちらは主に店側と機材やステージ進行の事について。15:00には予定がすべて終了。家に帰ると女房が頭痛で寝込んでゐた。

31日(火)-------------------------------------------------------------------------------------------------

ちょーと調子が悪い。目眩がして頭も痛い。頑張って専門学校に行ったが、生徒が全員休み。くそ。昼からスタヂオに入って東京の最終リハ。この体調の悪さを持って行きたくないなぁ。幸い午後のレッスンは休みにしてゐたので、帰って読書したりす。

中古で買って来たDVD「エイリアンvsプレデター」を見る。プレデターが格好いいんだなぁ、この映画。おや、これって時代設定が2004年て事になっとる。

でも確かノストロモ号が宇宙航海中に最初のエイリアンに遭遇したのって2087年のハズ。此れ如何に!?。あ、だからウェイランド社はエイリアンの存在を知ってゐて、アッシュに捕獲を命じた訳か。ん?でもビショップはウェイランド社長のコピーのはず。エイリアン2は「1」より57年後の話。あれ?さらに後年の設定の「3」には本人が出てなかったっけ?。ぢゃあここで社長死んだらオカシイぢゃんか。しかも、なんかエェ奴だし・・・。

最初に劇場で見た時(14歳)はマジで震え上がったものだ。なんにせよ、1979年に作られた映画のキャラクターが、今も「生きて」連作を産み出してゐる、てのがすごい。クトゥルー神話みたいなもんかね?。(今回、分からん人には全然分からんだらうな)。


翌月